第三者委員会報告書 第3章 ひょうご震災記念21世紀研究機構の人事

第三者委員会報告書 第3章 第三者委員会

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当ページには、告発文書の内容の真偽を確認する「文書問題に関する第三者調査委員会」が2025/3/19に公表した調査報告書の、「第3章 ひょうご震災記念21世紀研究機構の人事 」について文字起こしを掲載しています。

当報告書の全容は、以下リンク先を参照ください。

青文字は、当ブログ管理人が推測で補った箇所です。

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調査報告書(文字起こし) 第3章

第3章 本件文書に記載された事項1の調査結果

 ―ひょうご震災記念21世紀研究機構の人事をめぐる問題について―

第1 本件文書の記載

1 記載内容(以下、原文のまま引用)

① 五百旗頭真先生ご逝去に至る経緯

令和6年3月6日に五百旗頭真先生が急逝されました。その死に至る経緯が次のとおりです。

先生は現在、ひょうご震災記念21世紀研究機構の理事長をされています。井戸敏三兵庫県前知事から懇願され、兵庫県立大学理事長をはじめ兵庫県行政に深く関わってこられました。

令和3年8月に知事が反井戸の齋藤元彦氏に交代してからは知事はじめ県幹部との関係に溝が出来ていたようです。とにかく齋藤氏は井戸嫌い、年長者嫌い、文化学術系嫌いで有名です。

お亡くなりになられた日の前日ですが、齋藤知事の命を受けた片山安孝副知事が五百旗頭先生を訪問。要件は機構の●●●●(副理事長)をされているI(御厨貴)先生、J(河田惠昭)先生のお二人の解任についての通告です。相談ではなく、通告です。

来年1月は阪神淡路大震災から30年の区切りの時を迎えます。機構の役割・使命を果たす事実上最後の大きな契機であると言っても過言ではないと思います。I(御厨)、J(河田)の両先生はまさにこの分野における第1人者であり、井戸前知事が要請し、兵庫県政に関わってこられました。五百旗頭理事長もお二人には全幅の信頼を寄せておられているにも関わらず、このタイミングでの副理事長解任はハッキリ言って、五百旗頭先生と井戸前知事に対する嫌がらせ以外の何ものでもありません。

あまりに突然の県からの通告に、先生はその時点では聞き置くに止め、片山氏にはお引き取り願ったそうです。その日、帰宅されてからも、齋藤知事のあまりの理不尽な仕打ちに憤慨され、夜も眠れなかったそうです。翌日、機構に出勤されてからも、周囲の職員に同様の胸の内を明かされたそうです。そして、その日の午後に機構の理事長室で倒れられ、急性大動脈解離で急逝されました。

急性大動脈解離は激昂などの情動的ストレスがトリガーになることもあるといいます。齋藤知事、その命を受けた片山副知事が何の配慮もなく行った五百旗頭先生への仕打ちが日本学術界の至宝である先生の命を縮めたことは明白です。

2 趣旨

本件文書の当該箇所においては、令和6年3月6日に、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構(以下「21世紀機構」という。)の理事長であった五百旗頭真氏(以下「五百旗頭氏」という。)が死亡したことに関連し、その直前の時期(本件文書では「前日」と記されているが、実際には2月29日である。)に、齋藤知事の命を受けた片山元副知事が五百旗頭氏に対して副理事長2名の解任(正確には令和6年6月の任期満了による退任)を告げたことにつき、五百旗頭氏に対して配慮を欠き過大なストレスを与えたことを指摘するものである。

なお、本件文書には「先生の命を縮めた」との表現があるが、文脈全体からすれば、齋藤知事の指示のもとに片山元副知事が行った行為について、それが五百旗頭氏の死亡という結果と科学的、医学的に証明可能な因果関係があるという趣旨に限定して捉えるべきではなく、上記のとおり、五百旗頭氏に対し配慮を欠き過大なストレスを与えるものであったか、また、県の密接公社等に関する人事の進め方として問題はなかったか、という観点から調査を行った。

第2 判断の前提事項

1 21世紀機構

阪神・淡路大震災の経験と教訓を踏まえ、国内外の自然災害等に対して様々な支援活動に取り組むとともに、「安全・安心なまちづくり」、「共生社会の実現」すなわち多文化共生の21世紀文明の構築を目指す政策志向型のシンクタンクである。

平成18年4月1日に、それまでにあった財団法人阪神・淡路大震災記念協会と財団法人21世紀ヒューマンケア研究機構を統合し、財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構として設立され、発足した。平成22年に公益財団法人移行し、現在の公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構となった。

傘下に、「研究戦略センター」、「人と防災未来センター」、「こころのケアセンター」を置き、地域社会の発展に資する総合的な研究から、防災やこころのケアといった専門的研究まで多彩な活動を展開している。

2 令和6年2月29日当時の21世紀機構における役員構成

本件文書問題に関連する範囲では次のとおりである。

  • (1) 会長 齋藤知事
  • (2) 理事長 五百旗頭氏
  • (3) 副理事長J(河田)氏(人と防災未来センター長を兼ねる。以下「J(河田)氏」という。)、I(御厨)氏(研究戦略センター長を兼ねる。以下「I(御厨)氏」という。)ほか2名
3 五百旗頭氏の略歴
  • (1) 昭和18年生まれ、京都大学法学部、京都大学大学院法学研究科修士課程修了
    (政治学専攻)、法学博士(京都大学)
  • (2) 神戸大学法学部教授、東京大学客員教授、防衛大学校長などを歴任
    • 小渕内閣「21世紀日本の構想」懇談会・第一分科会座長
    • 小泉内閣「安全保障と防衛力に関する懇談会」委員
  • (3) 平成9年12月 財団法人阪神・淡路大震災記念協会研究企画委員会委員、同協会推進委員会委員
  • (4) 平成18年4月21世紀機構副理事長兼研究調査本部長に就任
  • (5) 平成24年4月21世紀機構理事長に就任
    令和6年3月時点も理事長職にあった。
  • (6) その他、兵庫県との関係では、兵庫県立大学理事長、兵庫県行財政審議会会長、兵庫県長期ビジョン審議会会長などを務め、令和6年3月の時点においても兵庫県立大学の顧問を務めていた。
4 J(河田)氏の略歴
  • (1) 昭和21年生まれ、京都大学工学部、京都大学大学院工学研究科博士課程修了、工学博士
  • (2) 京都大学教授
  • (3) 平成8年 京都大学巨大災害研究センター長
  • (4) 平成14年 阪神淡路大震災記念人と防災未来センター長
  • (5) 平成17年 京都大学防災研究所長
  • (6) 平成18年 21世紀機構副理事長
5 I(御厨)氏の略歴
  • (1) 昭和26年生まれ、東京大学法学部卒業
  • (2) 東京都立大学教授、政策研究大学院大学教授、東京大学教授などを歴任
  • (3) 平成22年5月 博士(学術)取得
  • (4) 平成24年4月 21世紀機構政策コーディネーター
  • (5) 平成28年4月 21世紀機構研究調査本部研究統括
  • (6) 平成29年4月 21世紀機構副理事長兼研究戦略センター長

第3 事実認定

  • 1 令和3年8月に齋藤知事が就任した後、兵庫県の密接公社等については組織のスリム化が図られ、その方向性のもとで、21世紀機構の役員構成について片山元副知事が所管して人事案を検討していた。
  • 2 21世紀機構の理事長、副理事長の人事は、同機構定款によれば、次のとおり定められている。

(同機構定款抜粋)

24条 理事及び監事は、評議員会の決議によって選任する。
2 理事長、副理事長、専務理事及び業務執行理事は、理事会の決議によって理事の中から選定する。

  • 3 ただし、21世紀機構は兵庫県の密接公社等に当たるため、実際には、従前より、兵庫県が理事長及び副理事長、その他理事の人事案を策定し、それに沿う形で、評議員会で理事を選任したうえで、理事会で理事長、副理事長が選任されてきた。
  • 4 令和5年12月ころ、片山元副知事は、企画部に対し、21世紀機構の副理事長の交代を検討しているので、21世紀機構の概要をまとめた資料を作成するよう指示した。
    企画部においては、企画部総務課の職員が同資料の作成を担当するように指示された。
  • 5 その後、企画部の担当職員が作成した資料も用いて、片山元副知事と企画部において、21世紀機構の人事について検討し、J(河田)氏とI(御厨)氏には任期満了を迎える令和6年6月で副理事長を退任していただくという方針となった。
  • 6 令和6年2月、片山元副知事は、21世紀機構に関する次の人事案について、齋藤知事に説明し、齋藤知事はこれを了承した。
    その人事案は次の内容であった。
    • ① 五百旗頭氏は、令和6年7月以降も理事長としてあと1期(2年間)その職を務める。
    • ② 4名であった副理事長を2名体制とする。
    • ③ J(河田)氏は、次の任期中に80歳となることから、県の内規に基づき令和6年6月で副理事長を退任●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
    • ④ I(御厨)氏は、同氏が携わっていた県史編纂が終了することから、同年6月で副理事長を退任●●●●●●●●●●●●●●●●●
  • 7 続いて、片山元副知事は、企画部の担当職員に対して、五百旗頭氏及びJ(河田)氏との面談の日程を調整するよう指示した。
    同職員はこれを受けて、日程調整を行い、2月29日に片山元副知事と同職員が21世紀機構(所在地 神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番2号 人と防災未来センター東館6階)を訪問し、五百旗頭氏と面談することとなった。
  • 8 2月29日午後5時ころ、上記の21世紀機構事務所にて、片山元副知事と同職員が五百旗頭氏と面談した。
    片山元副知事は、五百旗頭氏に対して、令和7年に震災30年を迎えるに当たり、令和6年7月以降もあと1期理事長を務めてほしい旨を伝えた。五百旗頭氏はこれを了承した。
    次いで、片山元副知事は、五百旗頭氏に対し、J(河田)氏、I(御厨)氏について令和6年6月で副理事長を退任していただくこと、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という方針を伝えた。その際、上記6記載の4項目の人事案を記した資料が提示された。
    これに対して、五百旗頭氏は、異論は述べなかったが、自身の口からわかったとは言えない、J(河田)氏、I(御厨)氏に確認する必要があると述べた。
    ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
  • 9 同日、上記8の面談後、五百旗頭氏は、21世紀機構の他の役員と話をした。五百旗頭氏は、同役員に対し、片山元副知事から伝えられた内容を伝え、意見、感想を尋ねた。
    同役員は、2名とも副理事長職についてはこだわらないかもしれないが、●氏について●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●というのは余りに失礼である旨の意見を述べた。これに対して、五百旗頭氏も、同意見であると述べ、片山元副知事にその旨を伝えることになった。
  • 10 その後、五百旗頭氏は、片山元副知事に電話し、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●としてほしい旨を伝えた。
    これを受けて、片山元副知事は、企画部の担当職員に対して、五百旗頭氏から上記の電話があったことを伝え、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を前提に、●●●●●●についての検討をするよう指示した。
  • 11 翌日以降4日にかけて、五百旗頭氏は、21世紀機構の関係者に対し、上記8の片山元副知事から告げられたことについて、腹が立つ旨伝えていた。
  • 12 3月6日、五百旗頭氏は、昼から出勤したが、執務を開始した後に側れ、救急搬送された。その後、神戸市内の病院で急性大動脈解離のため死亡した。

第4 評価

1 県側の行為が五百旗頭氏に与えた影響について

本件文書には、五百旗頭氏の死因である急性大動脈解離について情動的ストレスがトリガーとなることもあると記され、21世紀機構の人事について県側の行為が影響している旨が記されている。

一般論として、急性大動脈解離についてストレスが危険因子の一つであるとされているものの、本件調査において、五百旗頭氏の急性大動脈解離の発症について21世紀機構の人事に関する県側の行為、特に片山元副知事との面談に関することが原因になったことを裏付ける資料は得られなかった。

したがって、本件文書が指摘する21世紀機構の人事に関する県側の行為と五百旗頭氏の死亡との間の因果関係の有無は不明であるというほかない。

ただし、2月29日、片山元副知事らと五百旗頭氏との面談後の五百旗頭氏の言動からは、同日片山元副知事から事前の相談もなく伝えられた21世紀機構の人事に関する方針に関し、五百旗頭氏が少なからず不満に思い、ストレスを感じていたことが窺われる。

特に、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という点については、同日中に、五百旗頭氏が片山元副知事に対して連絡して再考を求め、これに対して片山元副知事も翻意しているように、関係者からすれば唐突な提案であるとの違和感を抱く内容であったと思われ、これを伝えられたときの五百旗頭氏の心境として内心穏やかでなかったとしても不思議はない。

また、五百旗頭氏は、21世紀機構についてはその前身である財団法人阪神・淡路大震災記念協会に平成9年から委員として関わり、平成18年に21世紀機構が発足した際には副理事長を務め、さらに平成24年からは理事長を務めるなど多年にわたって同機構の発展に尽力してきた立場にあった。ところが、令和3年に齋藤知事が就任してから齋藤知事と21世紀機構及び五百旗頭氏との意見交換等の頻度も以前より低下していた様子であり、齋藤知事側とのコミュニケーションが乏しくなっている中で、急に人事に関する方針を伝えられ、その内容について受け入れ難い部分を含んでいたことについて、五百旗頭氏が一定程度大きな負の感情を抱くことは自然なことであったと考えられる。

2 21世紀機構の人事に関する県側の行為について

県の密接公社等のスリム化の方針、また、それに基づく21世紀機構における今回の人事改革案については、県の政策に基づくものであるから、その是非について本調査委員会は言及しない。

ただ、それまでの21世紀機構の来歴、五百旗頭氏及びJ(河田)氏、I(御厨)氏が多年にわたって同機構に貢献してきた経緯や、翌年(令和7年)に節目である震災30周年を迎えるという時期に鑑みれば、片山元副知事が五百旗頭氏に伝えた人事改革案について、当時の他の県職員らの認識からしても疑問を抱く余地があったことも事実である。

まず、●●●●●●●●●●●●●●●●については、片山元副知事も翻意しているとおり、関係者には違和感のある内容であった。

また、J(河田)氏とI(御厨)氏の副理事長の退任については、両名の年齢からして近い時期の退任はやむを得ないとしても、時期としては震災30周年が終わってから人事改革を行うことが自然であると考えていた旨の関係者の証言も複数存在した。

人事改革の進め方として、令和6年6月をもってJ(河田)氏及びI(御厨)氏の副理事長職について再任しない(また、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●)というのであれば、五百旗頭氏に対し、より以前から人事案に関する県の考え方を伝えることや、継続した協議を行うといった、より丁寧な調整を行う余地はあったと思われ、そのように進める方が県の人事改革案を円滑に実施するためにもより効果的であったとも考えられる。

3 小括

以上のとおりであり、本件文書の当該箇所の記載内容について、21世紀機構の人事に関して片山元副知事が面談して伝えた方針が五百旗頭氏に対して日常的ではない一定以上大きなストレスを与えたことは推認される。

上記経緯に関して、密接公社等に当たる21世紀機構の人事改革の内容は基本的に県の裁量の問題であり、その方針を伝えた県側の行為に違法な点があったということはできない。ただし、21世紀機構の人事改革の進め方について、より丁寧に県側と五百旗頭氏らとのコミュニケーションを取りながら進める余地はあったものと考えられる。

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