2024/4/20に、県民生活部総務課の橋本浩良課長が自殺した。(情報ソース:7/24共同通信)
橋本課長は、渡瀬元県民局長の怪文書により「阪神・オリックス優勝パレードの不正な資金集めに関与し、うつ病を発症した」と指摘された人物である。
この橋本課長の自殺について、判明当時の報道では「やはり不正行為があったのか」「斎藤知事の不正行為のせいで命を落としたのではないか」といった論調で報道された。
しかし筆者は、むしろ「渡瀬県民局長の怪文書が、メンタルを病んでいた橋本課長に止めを刺したのではないか」と考えている。
当ページでは、その考えの根拠と、当時のマスコミ報道の問題を解説する。
怪文書が橋本課長に与えた苦痛
怪文書の記載内容
3/12の渡瀬県民局長作成の怪文書には、以下の通り記載されていた。
⑥優勝パレードの陰で
令和5年11月23日実施のプロ野球阪神・オリックスの優勝パレードは県費をかけないという方針の下で実施することとなり、必要経費についてクラウドファンディングや企業から寄附を募ったが、結果は必要額を大きく下回った。
そこで、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせることで補った。幹事社は但陽信用金庫。具体の司令塔は片山副知事、実行者は産業労働部地域経済課。その他、神姫バスなどからも便宜供与の見返りとしての寄附集めをした。パレードを担当した課長はこの一連の不正行為と大阪府との難しい調整に精神が持たず、うつ病を発症し、現在、病気休暇中。しかし、上司の井ノ本は何処吹く風のマイペースで知事の機嫌取りに勤しんでいる。
○公金横領、公費の違法支出
※怪文書の全文は、「2024/3/12 兵庫県庁文書問題告発文書 全文(伏字無し)」のページで公開。
事実確認の結果
- 後に、阪神・オリックス優勝パレードの寄付金集めに不正行為が確認されなかったことが、百条委員会や第三者委員会によって認定されている。
- また、自殺した橋本課長は警備の担当であり、そもそも資金集めに関わっていなかったことも判明している。(情報ソース:8/6サンテレビ)
百歩譲って、パレード資金集めの不正行為に真実相当性があった(真実と誤解しても仕方が無かった)としても、橋本課長の関与に真実相当性など無かっただろう。橋本課長は、産業労働部ではなく県民生活部なのだから。
それなのに、あたかも犯罪行為に加担したかのように書かれ、更に職場で伏せられていた「うつ病」というセンシティブ情報までもが職場に、そして全国に知れ渡ることとなった。渡瀬県民局長が井ノ本県民生活部長を貶めたいがために無理筋の文章を追加した結果、流れ弾が当たったのだろう。
メンタルを病んで療養中だった橋本課長に、大きな苦痛を与えたことは想像に難くない。心ある人が、あの怪文書を許せないと感じる、大きな理由の一つだと思う。
渡瀬県民局長も「自分のせい」と思い悩んでいた
7/21の赤穂新聞によると、渡瀬元県民局長は、「課長の自死を知った彼は、告発文を提出した自分のせいだと思い悩み」意気消沈していたとのことだ。
橋本課長が何の不正行為にも関与していなかったと分かった今、改めてこの記事を読むと、「全く真実でないことを書いたせいで橋本課長が自殺した」と渡瀬氏本人が自覚していたように見える。

橋本課長のご遺族の意向
橋本課長の自殺を7/23に公表した理由として、県人事課は、以下のように説明。
7月23日の昼過ぎに橋本課長の遺族代理人を名乗る弁護士が地元メディアに、遺族への直接取材を控えるよう求める書面を送ったことを挙げ、「そうした文書を出すことになったので県職員へ(情報を)出してもらっても構わないと(遺族から)連絡を受けました」と説明。(7/26集英社オンライン)
この説明は腑に落ちる。
5月には「橋本課長は亡くなっているのではないか」との憶測が流れ始め、7月中旬には「橋本課長が亡くなっていることは間違いない。兵庫県が隠ぺいしている」との報道が相次いだ。この当時、ご遺族にもマスコミ取材が相次いでいただろう。ちょうど、「ワインおねだり音声」も盛んに報道された時期だ。(参考:「ワインおねだり音声」は何だったのか)
メディアへの書面の送付によって公表可能になった。
ということは、そもそも4/20の橋本課長の自殺当時にご遺族が公表を控える意向を示した理由は、「マスコミ取材が嫌だった」ということだろう。
それではなぜ、4/20の時点で「マスコミ取材が来る」と考えたのだろうか。「ご遺族が『怪文書と自殺の間に因果関係がある』と考えていたから」という推測も、十分成り立つ。
少なくとも、「怪文書に橋本課長のことが書かれている」と知っていたはずだ。そうでなければ、一公務員の自殺にマスコミ取材が来るとは考えない。橋本課長本人も、亡くなる前に、怪文書を目にしていた可能性が高そうだ。
橋本課長の自殺をマスコミはどう報じたか
この自殺は、遺族の意向で約3カ月の間伏せられ、公表されたのは、渡瀬県民局長の自殺が報じられてから約半月後の7/23だった。
公表された当時、多くのマスコミ報道では「やはり不正行為があったのか」「斎藤知事の不正行為のせいで命を落としたのではないか」「県民局長以外にも自殺者がいた!3カ月も隠していた!」といった論調で報道された。
筆者としては、「少なくとも斎藤知事の不正行為のせいで亡くなったわけではない。むしろ渡瀬県民局長の怪文書によって亡くなった可能性がある。マスコミは、それを斎藤知事になすりつけている」と感じた。
マスコミの偏向報道を感じた事例の一つである。
当時のマスコミ報道の具体例
6/14 現代ビジネス
だが、複数の兵庫県議は現代ビジネスの取材に対し、異口同音にこう語る。
「H氏が亡くなったことはまず間違いない。本来なら県職員が亡くなると県庁から『訃報』が届くが、H氏については何もない。隠ぺいしているのは斎藤知事だと聞いている」

7/23 テレ朝「グッド!モーニング」
職員を苦しめたのは、激務だけではなかったようです。
亡くなった元幹部職員の告発文
「必要経費について、クラウドファンディングや企業から寄付を募ったが、結果は必要額を大きく下回った。そこで信用金庫への県補助金を増額し、募金としてキックバックさせることで補った」不正な資金集めを強いられたことに、精神的にも苦しんでいたと訴えています。
兵庫県 長瀬たけし県議
「道義的にも倫理的に本当にあっていいのだろうかと感じながら、非常に大変だったという話は漏れ伝わっておりました」
「不正な資金集めを強いられたことに、精神的にも苦しんでいたと」などと、本当に訴えていたとは思えません。不正行為も無ければ、資金集めの業務にも関わっていないのだから。
嘘八百報道ではないでしょうか。

7/26 集英社オンライン
こうして作られた資金が信用金庫に流れ込み、それを原資にパレードの寄付が実際に行われていたとなれば完全な犯罪スキームだ。そこに県の業務として携わったBさんが自死をしているわけである。
当然、労災である「公務災害」の可能性を探る必要が出てくるが、それが行われればBさんがどのような仕事をしていたのかが明らかになる。そこで県当局は、Bさんが亡くなったこと自体を認めない行動に出る。
一通りの事実確認が終わった今、改めて読むと、憶測だけで書いていることがよくわかる記事である。橋下課長がどのような仕事をしていたか明らかになっても、何ら問題はないだろう。

7/30 文春オンライン
ところが今回「カネ集め」に奔走させられた兵庫県のパレード担当課長が自死していたことが明らかになり、そのカネも「信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」と告発されていた。
一体何のための、誰のためのパレードだったのか? 万博PRのために懸命になったのも大きな要因にみえるが、万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマである。ゾッとする。
橋本課長が激務だったことは事実だと思うが、警備担当だったので「カネ集め」には奔走していない。
あたかも、橋本課長が不正に関与したかのような悪質な記事である。
